カニとかヤギとか若作りとか
 
 
 
 男性の記憶回路と女性の記憶回路は、
 なんだかデキが違うみたいで・・・
 
 おらなんか、
 一週間前に会ったひとでも、モンタージュ写真なんか作れない。
 でも、らく〜んさんは、十年前に会った人でも、覚えてる。
 
 十年ぶりに、仕事の打ち合わせできた人でも、
 らく〜んさんがちゃんと覚えていてくれるので、すっごく助かる。
 顔の特徴だけでなくって、
 以前の打ち合わせの時に、そのひとがしゃべったディテールまで覚えていて、
 ぱぱぱっと教えてくれるので、
 よくそんなこと覚えてるな〜っと、感心するばかり。
 
 顔とか容姿の特徴は、瞬時に覚えるらしい・・・
 声の特徴もすぐに覚えるので、
 十年ぶりの電話でも、すぐに愛想よく対応する。
 
 むかし、松本清張先生のミステリーで、
 電話交換手の女性が、声を覚えていて難しい殺人事件を解決する・・・
 というような小説があったけど、
 現在でもオペレーターとかやってるひとは、
 たぶん、電話から聞こえる声の特徴を瞬時に記憶するのだと思う。
 
 
 仕事場の、同一階のフロアには、
 たくさんの人がうろちょろするから、会えば挨拶するんだけど、
 おらとらく〜んさんは、根っから不真面目というか・・・
 特徴のある、おもしろいひとにはすぐにアダ名をつける。
 
 いままでにアダ名で呼んできたひとって、いっぱいいるけど、
 たとえば、
 カニのおじさん、カルロッタ、ヤギ、オリンピック、みどり荘、湯あがり、タンバリン、コッセツ、若作り、質屋、ローソン、おてもやん・・・
 
 
 それぞれ事情があってついたアダ名だけど、
 オリンピック・・・・ちゅうのは、
 ある事務所に勤務する女の子で、いつも廊下を全力ダッシュして走るので(廊下で他人と出会うのがイヤなのネ・・・)・・、そんな感じで・・
 コッセツは、冬になるとスキーに行くのか・・・、毎年、必ず、骨折して腕をギブスで吊って歩くひとで・・・
 みどり荘・・・ちゅうのは、ドアの内側にいつも洋服を吊していて、そこの事務所だけ学生アパート的な味わいになってて・・・オフィスビルとは異なる様相を呈していただな・・・
 
 アダ名って、
 嫌うひともいるけど、
 本人が、すごく喜ぶ場合もある。
 
 らく〜んさんの同級生で、
 ものすごく地味で、
 クラスでも、ぜんぜんしゃべらない女の子がいた。
 
 あるとき、京都の三十三間堂の中の仏像が・・
 ・・・あれれ・・なんか似てる・・・ってなって、
 その女の子の出席番号が「33番」だったこともあって、
 
 らく〜んさん「三十三間堂=33=ミミちゃん」というアダ名を思い浮かび、
 でも、彼女が嫌がったらダメなので、
 「**さん、あのね、こういう理由で、『ミミちゃん』っていう名前が出てるんだけど・・イヤかな・・?」
 っと聞いたら、
 「ぜんぜん・・・いいよ・・・」
 
 となって、
 以後、
 その女の子はクラスのみんなから親しみを込めて「ミミちゃん」と呼ばれ、
 なんか、うち解けて、楽しそうになり・・・
 
 卒業式の日には、
 彼女のお母さんが、らく〜んさんに会いに来て、
 「あの後、娘が、毎日、学校のことを楽しくしゃべってくれるようになりました。ありがとう。」 と、お礼をいってくれたそうです。
 
 
 子供同士なんて、ちょっとしたことで仲良くなるし、
 地味で暗い子だって、
 わははははは・・っと、みんなと笑うことで、仲良くなる。
 
 地味で暗い子は、
 恥ずかしがり屋さんだから、
 楽しそうにしている人たちの輪の中に自分からは入れないだけで、
 コッチが迎えに行って一緒に笑えば、
 なんのことはない、
 誰だって、
 照れながらでも、えへへ・・っと笑う。
 それが、人間っちゅうもんだ・・・
 
 そのきっかけが、ばかばかしいアダ名でもいいじゃないの・・という話でした。おわり。
 
 
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