ちっちゃいな
 
 
 
 らく〜んさんと、
 和歌山県の「那智の滝」にいったとき、
 
 大阪方面からきた団体客のおっちゃんが、
 「ちっちゃいな」というようなことを大声で云い始めた。
 「ナイアガラはもっと、ず〜んと迫力があった・・」みたいな・・
 
 これを聞いたらく〜んさんは、くすくすっと笑い始めた。
 みんなが楽しみに来ている那智の滝を目の前にして、
 思いっきりdisるような発言をするおっちゃんもおもしろいけど、
 
 得意げに「ナイアガラの滝」を出してくる、
 ま、人間的な、器といいますか、その、小ささ・・・・
 そういうところ、らく〜ん先生のツボにはまったようで、
 大阪のおっちゃんはオモロイ・・・ちゅうことになった。
 
 らく〜んさんは、
 東大阪のネジ工場の社長をやる「中川家」のネタが大好きで、
 人間の器の小さいところ、
 それが垣間見えると、笑い出すのです。
 ばかにしてるんじゃなくって、
 人間って、そういうとこ、あるよねえ・・・的な。
 
 
 「ちっちゃいな〜・・・」という理由でガッカリする人って、
 人種を問わず世界中にいっぱいるもん。
 
 
 有名な笑いばなしだけど、
 フランスのルーブル美術館にある「モナリザ」。
 
 アメリカの団体が来ると、
 必ずと云って良いほど「ちっちゃい〜!!」
 と、あきれたように云うひとがいるらしい。
 係員は毎度のことなので、笑いもしないけど、
 同じ画を見ている他の国の観光客は、少し苦笑い。
 
 
 ルーブル美術館にはもうひとつ、
 「レースを編む女」という、
 フェルメールの超有名な傑作があるけど、
 これは、ほんとうに思いっきり小さい。
 
 
 知らずに通りかかったら、
 凡作だと思って見過ごすくらいに、小さい。
 
 これ見てたら、日本人の数名の団体がやってきて、
 「うっそっぅ〜・・・ちいさいなあああ」
 なんて、驚きの声をあげてたけど、
 さすがに日本人で、声は、小さかった。
 
 
 まあ、もし、この「レースを編む女」を、おらがコソコソっと盗み出して、
 バッグに入れて(←そんくらい小さい)
 ぱぱぱっと、売却すれば(←出来ないケド)、
 ハリウッドの豪邸に住めると思うぞ(←妄想)。
 
 
 あ、いや、こんな妄想はいっぱいある。
 スイスにも、こじんまりしたピカソ美術館があって、
 けっこう、優れた作品が無造作に展示されてる。
 そこは、見てる人も少ないし、
 監視するひともいないから、
 「これ、いつでも盗めるんじゃないかなあ・・・」と、
 見てるコッチが心配になるくらいの、そういうカンジで。
 
 
 で、おらに審美眼はないから、でたらめに一枚の画を、
 コソコソっと持ち出せば、
 どんな凡作(にみえる作品)でも、
 東京都内に一戸建ては建つんじゃないかしら・・・と思う。
 
 
 美術館に行くと、作品を見るたびに、
 らく〜んさんに、こういう下世話なハナシを持ちかけて、
 ・・・最初は笑ってくれるけど、
 だんだん怒り始めるという・・・
 毎度、こんなカンジで美術館を楽しんでます。
 
 
 でもさあ、日本人って、
 もともとは、
 小さい世界や小さい宇宙を好むのじゃないかな?
 盆栽が、それだし、
 鉄道模型だって、それだ。
 
 
 伝統的な日本の「石庭」にしても、
 
 たとえば、
 京都の大徳寺にある「龍源院」の東滴壷(とうてきこ)、
 ここは、小さな小さな坪庭で有名で、
 日本最小の石庭にして最高傑作と云われます。
 
 
 興味があったので見に行ったけど、
 ほんとうに小さい。
 
 
 静かな気持ちで縁側に座ってみれば、
 空間的な広がりを感じるに十分に思った。
 
 
 こういう、小さいけど、
 デッカイ宇宙・・・・
 そういうことを表現できること、
 それが日本の貴重な文化のひとつだと思うのです・・・・
 
 
 こういうことは、
 たとえば、高知のはりまや橋や札幌の時計台を見て、
 「ちっちぇーなー」と嘲笑するひとには、たぶん伝わらない。
 
 
 モナリザを見て「ちっちぇーな〜!」とガッカリするひとたちは、
 世界中にいるし、それ、どうにもなりまへん・・・  さいなら。
 
 
 
 
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