雨 の 夜
 
 
 
 おらとらく〜んさんは、
 一緒に旅行するときもあるけど、
 かなり、ばらばらに勝手に旅行する。
 
 国内も海外も、別々に行くことが多いので、
 あそこいいよ・・・
 あ、そうなの・・・じゃ行ってみる・・・
 みたいな感じで、行動する。
 
 たまに一緒に旅行すると、とんでもないことになる。
 とんでもない・・・っちゅうか・・
 なんだ、その、
 おらのほうがビックリすることが、けっこうアル。
 
 あるとき、大分の駅で一緒にラーメン屋さんに入った。
 おらは、ふつうのトンコツラーメンを頼んだんだけど、
 らく〜んさんは「ワンタンめん」を注文。
 
 出てきた料理をみて、らくさんは。
 びっくりしたような顔をして、
 「あれ・・・、これ麺が入ってる!」
 とビックリしたように云い始めた。
 
 おらとしては「それは当たり前じゃ」としか思わないし、
 そもそも、ワンタン麺って、そんなもんじゃろ・・・?
 
 
 ところが、らくさんに聞くと、
 麺が入ってない「ワンタン」があるというんだけど・・・
 どうも信用できないな・・みたいな感じでいたのだす。
 
 で、それから数年たって、
 彼女が子供の頃に家族で行ってたラーメン屋さんを訪れたら、
 ほんとに、そこの「ワンタン」は、
 スープとワンタンだけで、麺が入ってなかった。
 そりゃ、もう、こっちが、びっくりした。
 
 
 食べ物とか、料理とか、
 自分の思いこみで、あーのこーの信じてると、
 ぜんぜん違うのもいっぱいあるんだな〜と後悔するよね。
 
 
 そんなのいっぱいあるけど、
 でも、らくさんと一緒に旅行すると、
 自分の考えとは別次元で行き先を決定することがあって、
 ほんとに、思いつくまま、気の向くまま・・・
 
 
 あるとき、山口県の小郡から新幹線で岡山まで移動して、
 夕方、岡山で新幹線を降りた。
 さて、このさきどうする? 
 
 大阪までの乗車券をもっていて、
 さて、
 岡山で泊まるか、姫路で泊まるか、となったとき、
 
 
 らくさんは、
 岡山から直角90度の「高知に行こう」と云い始めた。
 あんた、それ、あさっての方向なんだよな・・・と思っても、
 「坂本龍馬じゃ!」とか云ってるし、
 
 それもオモロイか・・・・
 ってんで、
 岡山駅で高知のホテルに予約を入れて、
 行きました、高知。
 
 夜おそくにホテルに到着して。
 いつも別々の部屋なので、ひとりで純米酒を飲んでると、
 窓の外は、
 雨上がりの濡れた道路に、
 信号がゆっくり点滅していて、
 なんとも云えず、のんび〜りした気分になった。
 
 夜のホテル、
 雨上がりの静かな時間、
 オレンジ色の街灯、
 し〜んとして、
 
 ついさっきまで考えもしなかった街に身を置いて、
 部屋でのんびりしてると、
 人生ってオモロイなあ・・・と、しみじみ思った。
 
 そのホテルのすぐ近所に生まれた坂本龍馬先生は、
 おらが見ていた、雨で濡れた道路を、
 何度も泣きながら歩いたと思う。
 
 その部屋から見える一角に、
 かつて、
 坂本龍馬が愛した、「まんじゅう屋長次郎君」の家があった。
 その風景が、そのときは、ありありと目に浮かんだ。
 
 
 まんじゅう屋長次郎君は、
 幕末維新のストーリーで、
 らく〜さんが最も尊敬する人物のひとり。
 
 勉学に熱心で、一生懸命だったのに、
 長崎の亀山社中において、
 大将の坂本龍馬が不在の間に、汚名を着せられ、
 無理矢理の「切腹」で果てたひとである。
 
 
 多くの犠牲の命の上に歴史はある。
 高知の夜のホテルから外を眺めて、
 静かに「まんじゅう屋(長次郎君)」のことを思うだけで、
 なんか、泣けてきた。
 
 
 そのホテルの近隣には、
 人生を思い返すだけで、
 思わず泣ける人物が、どっさどっさ、いっぱいいる。
 
 
 その夜ほど、らく〜んさんに感謝したことはない。
 
 
 
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