天丼と仏壇
 
 
 
 食べるもの・・・・って、
 だれでも好き嫌いがあっけど、
 子供の時にすきだったのに、
 大人になったら、あんまり・・・
 みたいなのって、あるよね。
 
 
 わては、子供の時、ざるそばと塩辛が好きだった(らしい;談マイ母)けど、
 いまは、それほどしょっちゅう食べるわけじゃないぞな。
 
 マイ母に云わせれば、「あんたは塩辛さえあれば幸せそうにいくらでもご飯を食べた・・・」そうで、それをみた親戚のおっちゃんが「・・・間違いなく呑んべえになるな・・・」としみじみ云ったらしい(←正解!!)。
 
 で、どういうわけか、あるときから急に「天丼」が好きになって、
 アルバイトでお金をもらうと、すぐ「天丼」を食べに行ったことがあって、
 そのころは、あそこが美味しい・・と聞けばすぐに走って行き、
 いやいや・・・、それよりあっちがいい・・・と聞けば、すぐに駆け出し、
 あっちこっち、天丼を食べに行ってたことがありました。
 
 東京には名店・・と云われるところがいっぱいあるので、
 「あそこはいいよ」と聞けば、マイ財政が許す限り行ってたんだの・・・。
 あ、ときには金持ちの友人にゴチになることもあった。
 
 ま、そうやって食べてると、なんとなく理解してくることもあっただ。
 
 おらの味覚は、なんか性能がわるい・・・かも・・。
 
 これはの・・・・
 例えば、らく〜んさんと一緒に食べるとわかるんだけど、
 彼女は、味の違いがきっちりとわかるのに、
 おらは、こっちの味も、あっちの味も、・・・なんか、わからんぞ・・?
 っちゅうことが、けっこうあって、
 
 けっきょく、おらが「おいしいね・・・!!」と云うのは、
 たいてい、味の濃い、くどい味付けの、
 ま、なんちゅうか、あれだ・・・・、そういうの。
 
 織田信長みたいだべ・・・?
 信長さんは、京都から呼び寄せた超一流の料理人の作った料理に激怒したというからの・・・味がしないぞ・・・!!!!!! って。
 ま、子供のころから、繊細な味の区別を必要としない食事で育つと、
 おらみたいに、おとなになって寂しい思いをするんだす、
 
 子供のころから塩辛で満足してたら、日本料理やフランス料理の、繊細な味の違いなんてゼッテわかりません!!
 
 む〜〜〜んんんん・・・・
 でも、おらなりに修得した「東京天丼めぐりの旅」で、
 何カ所か、らく〜んと一緒に行ったら、たいてい喜んでくれた。
 ま、天丼は味が濃くても良いと誉められた。
 
 でも、なんか軽くバカにされてるみたいなので、お、よ、テメ・・・ちゅって、ほんじゃ、純粋な日本料理、京都対決だ・・っちゅうような、アホらしいはなしに発展していったんだけど、そのはなしは別の機会にやるとして・・・
 
 天丼といえば、わては、自動的に、仏壇を思い出すのだす・・・。
 
 あるとき、仏壇屋さんでアルバイトやってたことがあって、
 そこの仕事場の近くに、めちゃくちゃ美味い天麩羅屋さんがあった。
 だから、昼休みは、いつもその店に通って、天丼を注文してた。
 ぜんぜん飽きないし、毎日が至福。
 百回食べても百回が至福の、不思議な天丼ね。
 
 
 そんで、仏壇って、紫檀とか黒檀とか高級木材を使ってるから、
 そもそも、値段がたかいけんども、
 ・・・いや、高いったって、
 普通は、ま、30万とか、40万とか、50万とか、
 それくらいのが売れ筋で、
 大きさも、それほどじゃないから、
 いつも、先輩と二人で配達に出かけてただよ。
 
 
 ところがあるとき、「超」高級仏壇の配達を任されて、
 それが、まあああ・・・でかいし、重いし、うわ〜っちゅうやつで、
 値段は気が遠くなるような金額のもので・・・
 
 配達に行ってみると、
 きらきらきら〜んとした新築の家でのお・・・・
 玄関も、壁も、天井も、ぴっかぴかで・・・
 ぴんぽ〜ん・・・で出てきたのは、
 いかにも人格者の、ニコニコっとした、じいさま。
 世界中のだれがみても、いいひとだ・・・と思えるひと。
 民族も国境も越えるニコニコっとした表情の、ほんとうにいいジ様。
 
 おらたちは、案内されるがままに、配置場所を説明された。
ジ様「仏壇は、この部屋に置いてください」
先輩「壁につけて置いてもいいんですか?」
ジ様「隙間があると掃除とか面倒だから、壁にくっつけていいです」
 
 てなわけで、その大きな仏壇を、玄関からそろ〜りそろ〜りと入れて、
 ひとつめの部屋を超えて、
 仏壇部屋へと運び入れまして、
 重いので、休憩をはさんだりして、
 さて、よいせのせ・・・・っと、仏壇を壁に密着させようとしたとき、
 ・・・ごり・・・っと音がして、
 新築の壁の化粧が、ばささささっと剥がれて、落ちた!!
 
 その現場にいたのは、先輩、おら、ジ様の三人だったけど、
 三人とも、うわわわえわっと、思わず叫んでしまっただな・・・・
 
 でも、ひたすら謝る先輩とおらに対し、
 ジ様は、ニコニコっとした表情で、
 「いいよ、いいよ、気にしなくていいよ」
 と、云ってくれたのでありました。
 
 何度も何度も謝って、帰る道すがら、
 仏壇に祀られる仏様もそうだけど、毎日、仏壇に手を合わせるであろうジ様が亡くなったときは、ちゃんと成仏できればいいなあああああ・・・と、深々と頭(こうべ)を垂れたわてらでありました。
 
 
 
 
 
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