ベナレス その五
ふつうの日本人がベナレスやインドを旅行して思うことは、
@ 交通量の多い街中では道が怖くてわたれない
A 歩いてるとインド人がジッとみるので慣れるまでこわい
B すぐにだまされそうになる
C バクシーシ
もっとあるかもしんないけど、おら的には、ま、こんなとこかの。
「道が怖くてわたれない」ってのは、これはもう、ホント、すごいんだから。だいたい、ニューデリーとか大都会でも信号が少なくって、そこをバンバン車が走ってくるので、もう途切れなく走ってくるもんで、道の向こう側に行くのに一苦労するだな。おらは、いっかい、交差点で思いっきり全速力で突っ込んできたバスにひき殺されそうになった。むこうはブレーキかける気もないもんね。
もうね、あんた、しゃれにならんのよ。
あるときJAL様の国内線に乗って機内サービスの落語きいてたら、ニューデリー落語会ってのをやってて、林家こぶ平師匠(林家正蔵師匠)が、「デリーでは道をわたれない」と語って、現地在住の日本人のみなさんの爆笑をうけてました。道をわたるコツってないけど、勇敢に道を渡る現地インド人についてゆくしかないんだす。エジプトのカイロもすごいけど、やっぱですね、インドってすごい。
そんでさ、おらもタクシーにはばんばか乗るからわかるけど、インドの運転手さんは、「ウシ」には細心の注意を払ってましてね、おウシ様が道をゆうゆうと横切ってるときはブレーキなんかかけちゃったりすんのね。そんで人間が横断してるときはアクセル全開で突っ走るのよ。ほんとね、習慣だから、いいとか悪いの次元を超えて、こわい。
「歩いてるとインド人がジッとみる」っていうのは、最初はおどろくけど、一日二日たつと、慣れます。相手は、別に悪気はなくって、ただ見てるだけだからさ。でも、西洋人の女性は怖いのかな・・・
あるとき、おらがベナレスの町を歩いてると、
おらの後ろを、ずううううう〜〜っと、リュックを背負った若いドイツ系の女性が不安そうな表情でついてくるんだの。
すぐに、・・あ、慣れてなくて町歩きがコワイのね・・・と思ったから、ゆっくりあるいて、30分くらい、あっちふらふら、こっちふらふらしてたら、彼女も少しずつなれてきたのか、少し離れて歩き始め、そしていつしか一人で歩いて行った。
「すぐにだまされる」ってのは、料金の支払いのときにウカっとしてると、「金額が足りない」と云われることかなあ・・・。
いろんな場面で経験するけど、
例えば「60ルピー(130円)です」って云われて、100ルピー紙幣を渡すとします。で、目を離してると、「ちょっとちょっと、あんた、これ10ルピー紙幣だよ。あと50ルピー足りないよ」ってことになる。
こういうとき日本のバックパッカーの兄ちゃんは、けんか腰の言い合いをするか、あきらめて支払うみたいだけど・・・
おらはな、そういう場合、
まず、無言で、うなずく。
そんで、すこしだけ、アゴ先を前につきだす。
マフィアのボスが「・・始末しろ」っていうときの無言の指示。
「(くだらないことやってないで)さっさと釣り銭よこしな」
と無言で圧力をかけると、相手はあっさりあきらめて、
何事もなかったかのように、釣り銭をよこす。
この間合いとタイミングは、現地学習あるのみ。
*うなずきはインドでは否定、クビ横フリは肯定。
んで「バクシーシ」って、ようするに「お金ください」って、
そういうことなんだけど、
複雑な事情があって、しかたがないときもいっぱいある。
面倒なはなしは省くけど、
「バクシーシ」をしている女性のなかには、
たいへん美しいサリーをまとっているひともいて、
そういうのを見た日本人は、
「こんな綺麗な服をきて物乞いするなんて・・・」
とおもうでしょうけど、
・・・・ちがうんです。
なるべく、相手に失礼にならないように、
自分がもっているいちばん良い服を着て物乞いすることもあるんです。
・・・これ、わかるひとはわかるし、
わからないひとはわからないので、
これ以上は、やめときます。
冷たく切り捨てるより、
理解しようという、少しのきもちがあれば、
また別の、違った世界がみえてくるかも・・・です。
あと、番外編で、「町にはウシが多い」ってのもある。
ベナレスなんか、街中にウシがいて、
鉄道駅のプラットホームをウシが平気で歩いてるし、
駅の待合所では、
スーツ姿のエリートサラリーマンがノートパソコンであれこれ議論してる前を、
ウシがゆっくり歩いて通りすぎる。
こんなん、いいもわるいもなくって、
バンバン車が走る道のまんなかにウシがねそべってても、慣れれば平気になってきます。
ベナレス駅にはサルもいて、人間みたいに列車をながめてます。
だれもなんとも云わない。
サルも神聖な生き物。
道を歩いてると、むこうからロバや山羊もあるいてくる。
みちばたのゴミ箱をブタさんが嬉しそうにあさってる。
みんな、仲間。
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