たちばなし
 
 
 
 
 
 むかしは、
 近所のありこちで立ち話をしてたひとがいたな。
 
 最近は、ひとと話をするのが苦手とか苦痛・・・
 みたいに思ってる人が増えてるみたいだけんど、
 
 時代劇とかみてもさ、
 長屋の近所の奥さん連中が集まって、
 あ〜のこ〜のしゃべってるシーンがあるよね。
 ああいうの好きです。
 
 
 ゲームやネットに浸かりきってる子供。
 「ぼくはコミュ障(コミュニケーション障害)だから・・・」
 なんて、
 
 他人と普通に会話が出来ないことを。
 
 「それって悪いことですか?」
 
 みたいな感じで云うから、
 
 困ったもんだのぅ・・・
 
 
 でも人間っちゅーものは、
 興味があるひととだったら、
 いくらでもしゃべることが出来る。
 
 
 おらは、あるとき、
 テレビ(NHK)をみていた。
 
 ニューヨークで果物を売っているネパール人の物語だった。
 
 主人公は、
 ネパールで有名な由緒ある家系の人物だったけんども、
 ネパール王室の騒動があったときに、
 政治的な危険を感じて自国(ネパール)を脱出し、
 ニューヨークで、小さな果物店を営んでいる・・・
 
 という内容だった。
 
 とても感動したのだすよ・・・おら的に。
 涙がでた。
 
 
 で、
 そのとき番組映像で映った果物屋さんの近隣の風景を思い出し、
 ネットで、あれこれ検索をかけた。
 場所はどこなんだろう・・・っちゅうミーハー興味ね。
 
 すると、記憶とドンピシャの風景(店名)が見つかった。
 その店名の情報からニューヨークの場所を知り、
 幸いにして、知ってる場所だったので、
 
 さっそく、
 らく〜んさんと一緒に、行ってみた。
 ニューヨークの中心部にある広大なセントラルパークの南に、
 コロンバス・サークルという地点があって、
 
 その近所にある、
 「入口の上に緑色の庇(ひさし)があるレストランみたいな・・」
 という記憶をたどって歩いていくと、
 
 ありました。
 
 
 これです(写真1)。
 どんぴしゃでした。
 
 で、
 その、すぐ近くの場所に、
 主人公の「かれ」が小さな果物店をやってるはずなので、
 ゆっくりと、さがしました。
 
 
 するとですね、
 ささやかな天蓋を張ったお店が集まってる小規模ショップの場所があり、
 そこに、「かれ」がいたのです。
 テレビでみた風貌と完全一致。
 
 
 いきなりしゃべりかけるのもなんなので、
 
 おらとらく〜んさんは、
 普通の「客」として、かれの店に並ぶ果物をみて、
 値段と商品を、値踏みするような感じでおりました。
 
 
 すると、
 「かれ」の方から、しゃべりかけてきた。
 
 
かれ 「きみたちは日本人であるかな?」
おら 「そーだす」
かれ 「な、な、ならばだな(興奮ぎみ)、ミ、ミーは、日本のテレビに出たことがあるんだけど、きみたちは、そ、それをみただろうか?」
おら 「・・・みただよ(ゆっくり落ち着いた声で)」
かれ 「(びっくりして)本当か?」
おら 「・・な、だから、ユーに会うために、日本からここまで来た。」
かれ 「・・そ、そ、それは本当なのか?」
おら 「・・ああ、調べるのに時間がかかったよ。インターネットでいっぱい検索かけて、ようやくこの場所を見つけたン。で、今回は、ユーに会うために、ニューヨークにやってきた。」
かれ 「取材はされたけど、まさか日本人が会いに来てくれるとは思わなかった。」
おら 「いや、あれはインパクトのあるテレビ番組だったよ。日本人で感動した人はいっぱいいると思う」
かれ 「・・・日本の全体に流れたのか?」
おら 「そうだよ、日本全体に流れるテレビ番組で、ユーのことは1千万人以上の日本人がみた思う」
かれ 「・・・(涙ぐむ)」
 
 てなわけで、
 らく〜んさんが、ネパールに残してきたご家族のことを訊いたり、
 「プロレス(マスク・ショー)」をやってるんだよねとか、
 「プロレス(マスク・ショー)」は週に何回やってんの? とか、
 身近なことを訊いてね(かれの生計が苦しいので・・・)、
 
 難しい政治的なことはいっさい抜きにして、
 だんだん楽しい会話(たちばなし)になって、
 三人で、ず〜っと笑ったりしながら、しゃべってた。
 
 ほんとに楽しい時間だった。
 コッチはかれの素性を知ってるけど、
 かれは、われわれの素性をしらない。
 
 それでも、自分が取材を受けたテレビを観た日本人が来たと思うから、
 なんとなく気持ちのうえでの距離感や「カベ」がなくって、
 25分か30分くらい、
 立たったまま、一緒にいろいろしゃべった。
 ネパールのこともしゃべった。
 
 
 はじめて会ってしゃべったのに、
 生まれたときからの知り合いの友人のような感じがした。
 
 これね、
 友情は、
 つきあった年月の長さではなく、
 魂の結びつきの度合いが大切なのだな・・・
 そんなふうに思ったよ。
 
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 おまけ
 ニューヨークの「かれ(写真2」。
 
 
 
 
 
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