湖のトラちゃん
 
 
 
 
 
 お金もないのに、
 あとさき考えずにヨーロッパに旅行して、
 
 そのとき、ぜんぜん知らない町で一泊したことがあるン・・・。
 
 
 そこは、
 ほんとに小さな村で、
 どうして、そこで列車を降りたのか、
 どうして、そこで泊まろうとしたのか、
 まったく記憶になく、
 
 
 でも、
 でたらめに泊まったときの印象が強烈だったので、
 
 年月を経て、もう一度、そこに行ってみただよ・・。
 
 
 記憶にあるとおり、あいかわらずの、のんびりした風情の村で、
 鉄道駅を出て、坂を下ったところにある湖の方向へ歩き出すと、
 ネコが出迎えてくれた(写真1)
 
 
 おらは、写真1のネコちゃんと同じような雰囲気の、
 いわゆる三毛猫(名前トラ)を手下にしてたことがあるので、
 鉄道駅を降りて、とつぜん、トラにそっくりのネコが近寄ってきて、
 身体をすり寄せてグリグリしてくれたから、嬉しかったなあ。
 
 
 スイスの田舎町は、
 日本人にとっては観光の目的地にもならない処が多いけど、
 
 そこに行くと、
 ひたすらのんびりして、
 朝、昼、晩、刻々と変化する空と空気を感じとって、
 ぼさ〜っとしてるだけで、まったく飽きないから、
 ほんとうに(旅行者にとっては)贅沢な時間を味わえます。
 
 
 でね、
 このとき(写真1のとき)は、らくさんと一緒だったんだけど、
 写真1に写っている階段を下りて、湖に向かって歩いてるとですね・・・
 
 
 おおおおおおお!!!
 湖の方向から、
 10人ほどの日本人の団体旅行者が歩いていらっしゃった!
 
 
 これは、予期せぬ突然のことで驚いたし、
 向こうのみなさんも、
 おらとらくさんが、ひまそうなカオでぶらぶら歩いてるので、
 なんだか、ものすごく驚かれたご様子で、
 
 お互いに、思わず「こんにちは」と会釈して挨拶しただよ・・・・
 
 
 こういうことって、スイスの中ではけっこうある・・・
 
 
 むちゃくちゃな田舎町で、
 ときどき、旅行中の日本人の少数グループに遭遇します。
 
 あとで考えると、たいてい鉄道と船の乗り換え時刻に関係があって、
 トーマスクックの時刻表を開いて確認すると、
 なるほどな・・・・と納得するんだけど、
 
 田舎町でとつぜん日本人に遭遇すると「何故こんな処で・・??」と思っちゃう。何度経験しても慣れない。いつも不思議に思っちゃう。
 
 
 コッチも「あれれ・・なんで・・・??」と思うけど、
 きっと、団体客のみなさんの方が「なんで・・・??」
 と強く思ってるんです(たぶん)。
 
 団体の皆さんは、プロの添乗員さんが引率してくれて、
 鉄道とかのタイムスケジュールに会わせて行動してるんですけど、
 
 らくさんとおらは、でたらめに歩いてるわけで、
 
 そういう、ぼさ〜っとひまそうに歩いてる日本人と、
 海外の片田舎で偶然に出会って挨拶したら、
 
 「・・あれ・・・このひとたち、なんだべ??」
 
 と、思ってる彼らの想念を、ひしひしと感じるン。
 
 
 あるとき、とっても小さな田舎の鉄道駅で、
 らくさんと笑いながら、店の外のテーブルで食事をしていました。
 
 その日は、長距離バスで何回も峠越えをしてきて、
 そんで、
 自分たちが乗る列車の時間まで時間があり余りすぎて、
 しかたがないから、ピザとかサンドイッチを食べて笑ってたら・・・
 
 
 有名な観光特急列車でやってきた、
 日本の団体旅行のおばちゃんたちに出会って、
 とっても、びっくりされた。
 
 おばちゃんたちにしてみれば、
 スイスの田舎の鉄道駅に日本人がいて、
 外のテーブルで食事をしている・・・
 というのが、とっても驚きだったみたいでした・・
 軽く会釈してみなさんとご挨拶しました。
 
 
 でもですね、
 そのとき、
 おらとらくさんがもっと驚いたのは、
 近くのテーブルで食事をしていたイタリア人の6人組で、
 
 
 とにかく、なんでもかんでも料理をガンガン注文して、
 ワインが、10分に一本の割合でなくなって、
 次々と、あわわ「もうないぞ!」とワインを注文する姿がですね・・・
 
 さすがイタリア人だなあああ・・・と、しみじみ感心したのです。
 食べるし飲むし・・・
 30分の間に3〜4本のワインを注文してたなあ・・・
 
 ワインで気分が良くなったイタリア人も、コッチみて笑顔になってた。
 破壊的な楽しさで、われわれも笑顔になりましたヨ。
 
 小さな鉄道駅のレストランで食事したりコーヒー飲んだりして、
 列車やバスを待ってる時間も、楽しいですネ。
 
 鉄道駅で少しの時間だけ(他生の縁で)一緒にいて、
 そのあとバラバラに目的地に向かって出発してゆく・・・
 そういう偶然の出会いって、
 ほんとうに印象的なので、いつまでも記憶に残ります。
 
 
 
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